背泳ぎは、泳ぐ際に顔を水に付けないので、他の泳法よりも不安感がなく、楽しいというお子さんもいます。逆に、上を向くということの恐怖感から、苦手意識を持ってしまうお子さんも少なくないと思います。
私の娘も顔が沈むのが怖いという恐怖感から、顔を水面から出そうという意識が強すぎて下半身が沈み、さらに顔を出そうとして顎が上がり、体が沈むという悪循環にはまっていました。ここでは、そんな時に効果的だった一言アドバイスについてお話しします。
姿勢のアドバイス
背泳ぎでは、体の軸を真っ直ぐに保つことが大切です。これが水の抵抗を極力抑えたストリームラインの基本姿勢となります。ここで、顔が水に沈まないように顎を上げすぎると、足が沈みやすくななます。逆に、顎を引きすぎたり、体がくの字に曲がったりしていると腰が沈みます。
娘もお腹が下がらないように腹筋を意識しながら、おへそを水面の位置でキープしようとするのですが、なかなかイメージ通りにできません。「おなかをあげて」と言われ、そうしようとすると腰が反ってお尻が下がり、下半身が沈んでいました。
お尻が下がって下半身が沈んでしまっているので、「おしりを上げて」と言われます。お尻を上げようとするとお腹がへこみ、体がくの字に曲がって体が沈みます。すると今度は「おなかに力を入れて」と言われ、そうしようとすると体全体に力が入ってしまい、やはり体が沈みます。体が沈んでいくと、顔を出そうとして顎が上がり、ますます体が沈みます。
このような悪循環にはまってしまい、混乱してどうしていいか分からなくなってしまってるようでした。そこでかけてみたひと言が「お尻の穴を締めて」です。これを意識することで、腰を曲げることなく骨盤を前に出すことができ、お腹を下げることなく腹圧がかかり、その結果、体の重心をみぞおちのあたりにまで上げることができたようです。
実際、人間の体は浮心(浮力の中心、胸のあたり、肺に空気が溜まっているので)と重心(お腹、おへその少し下)の位置がずれているので、足から沈んでいきます。そこで、腹圧をかけて重心を上にもっていくことが必要です。私の娘の場合は「お尻の穴を締めて」で、その感覚を掴めたようです。
キックのアドバイス
「お尻の穴を締めて」で姿勢はかなり改善されたものの、それでも泳いでいると徐々に足が沈んでいきます。背泳ぎのキックは基本的にクロールのキックと変わらないのですが、力の作用する向きが逆になります。クロールでは、足の甲で水を蹴り降ろすとプールの底に向かって水を押すことになるので、体は浮きやすくなります。
しかし背泳ぎでは仰向けに泳ぐので、クロールと同じように足の甲で水を蹴ると水面に向かって水を押すことになり、足はプールの底の方へ向かってしまいます。つまり、足が沈む方へ力が働くキックをうっていることになるのです。このキックはアップキックといい、推進力を生むキックなのでこれも必要です。しかし背泳ぎでは、足の裏とふくらはぎで水をプールの底へ向かって押すダウンキックも重要なのです。
なぜなら背泳ぎでダウンキックがうまくできていないと、足が沈んでいってしまうからです。ダウンキックをうまく行うコツは、膝を伸ばすように意識して、足の裏で下に蹴るようにします。背泳ぎでは、アップキックとダウンキックの力加減は4:6又は3:7程度で、クロールのバタ足の時以上にダウンキックをしっかり意識することで足の沈みが防げます。
私の娘の場合、10:0でアップキックに全神経を集中させているようでした。そこで「足の裏で水を下に押すように」言うと、アップキックとダウンキックの力加減が0:10になってしまい、進まなくなってしまいました。アップキックとダウンキックの両方にバランスよく意識を向けることができないようでした。
そこで、「水を踏んで、後ろに蹴っ飛ばす」ように言ってみました。すると、足の甲で蹴る前に、足の裏で水を押すことへも意識を向けることができるようになりました。ここで「後ろ」というのは進行方向と逆の方向です。壁からスタートしたなら壁に向かってという意味です。私の娘の場合はこのようにしてなんとか足が沈まないようにできるようになりました。
まずはここまでできれば、いつまでも仰向けに浮いていられます。私の娘もここまでできて背泳ぎが楽しくなったようで、いつまでもプカプカ浮いて遊んでいました。
呼吸のアドバイス
背泳ぎはいつでも呼吸が出来るので、呼吸を意識している人は少ないかもしれません。スイミングスクールでも最初は教わらないところもあるみたいです。娘も背泳ぎでの呼吸については特に何も教わってないようでした。しかし、実は背泳ぎでも呼吸のコツをしっかりと身につける事は大切なことなのです。
「いつでも呼吸ができる」という刷り込みから、呼吸を意識しないと、呼吸が浅く無酸素運動のようになってしまい、すぐに息切れし疲れやすくなってしまうのです。「いつでも呼吸できるので楽ちん」のはずが、なぜかすぐに疲れてしまうのです。
背泳ぎでの呼吸は、かいた手が太ももを通って水面に出てから真上(90°)にくるまでに行います。そこで娘には、「水から顔は出てるけど、息は止めておくこと。そして手が太ももを通った時にパッと息を吐く。」とだけ言いました。
パッと息を吐けば、その後自然にスッと息を吸ってすぐに息を止めることになります。こうして、ちょうど良いタイミングで呼吸ができるようになりました。すると、鼻から水が入りにくくなり、恐怖感も減ります。さらに常に肺に空気が入っていることになりますので、体も浮きやすくなるのです。
まとめ
背泳ぎ上達のためのワンポイントアドバイスは、1.お尻の穴を締めて 2.水を踏んで、後ろに蹴っ飛ばす 3.手が太ももを通った時にパッと息を吐く でした。これにより、足が沈みにくくなり、推進力が増し、体が浮きやすくなり、鼻に水が入りにくくなったようです。このように、ある程度背泳ぎの形ができてくると、仰向けに浮いていることが気持ちいいようです。
また、他の泳法に比べて呼吸も楽なようで、背泳ぎが楽しく大好きになったようでした。ただ、まだまだスピードが足りないので、スピードアップのためのコツも身に付けなければいけないでしょう。でもそれは次のステップです。スイミングスクールで基準タイムが設定されるところまで昇級するまでは、このまま楽しく泳いでくれればいいかな、と思っています。
例えば正しい姿勢を作るという目的に対して、お腹を意識するとできる人もいれば、お尻を意識することでできるようになる人もいます。人の感覚は千差万別ですから、色々な言い方でその人にあたアドバイスを模索してみて下さい。
以上、お子さん向けのアドバイスではありますが、もちろん、これらは大人の方がこれから背泳ぎに挑戦する場合の参考にもなると思います。今までできなかったことができるようになるのは、子供にとっても大人にとっても誰にとっても嬉しいことだと思います。是非、お子さんと一緒に新しいことにチャレンジしてみて下さい。
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